iモードFeliCaは『壮大なる慈善事業』か?
6月16日。行ってまいりました帝国ホテル。「iモードFeliCaサービス」発表会。
短刀直入に感想から言うと、
「ドコモとしては非常に良心的、かつよくできてそうなサービスモデルで、おそらく、結構ブレイクするだろうと思った」
というものです。
僕がこんなコトを書くと、きっと意外に思われる方もかなりいるんだろうなぁ。
最近ずっと、日本の携帯キャリアに対しては批判的なことばかり言ってきたから、「またコイツは、イヤミや皮肉の一つも言うんだろう」みたいに思ってる方も、もしかしたら結構いらっしゃるのかもしれない。
●ユニバーサルサービスでなければ悪、というわけではない。
以前、このblogの「ケータイビジネスの二極化進む」で、「少なくとも今後数年、FeliCaはユニバーサルサービスたりえないだろう」と書いたんですが、どうも、そのアーティクルへの引用や、一連のトラックバックなどを見てると、僕が「FeliCaなんかダメだ」と主張してると思ってるらしい。
まぁ、わかりやすく整理して簡潔に書かない僕もきっと悪いんだろうね。(笑)
FeliCaに限らないけど、特定のモノやサービスを「ユニバーサルサービスたりえない」などと言うと、どうして多くの人は、それを否定的に解釈するんだろう。
日本人の旧いDNAが作用しちゃってるせいか何なのか、「みんなが使う=善」「一部の人だけが使う=悪」などというのは、発想としては短絡的すぎると思う。少なくとも、商売という観点で見た場合、本当に、万人に使ってもらう必要があるのかどうかということと、商売上の成否は別に関係ないでしょ。
その一番端的な例は、たとえば秋葉原とか中野ブロードウェイにあるフィギュアの専門店。
『万人』の目から見れば、「なんでこんなモンに8万円も払うのー」というような品が飛ぶように売れてるんだから。
●普及は最初に「ケータイサービス感度」の高い人から進む。とならば‥
できれば、前に書いたとこをよく読んでほしいんだけど、
『カラオケボックスや、テーマパークの入場にFeliCaを使うが当たり前になる時代などは当分やってこない』というようなことは書いているものの、「ネットワークRPGやeコマースなど、一部の分野ではかなり成功すると思う」と書いてるんだけどな。
一部のblogとか掲示板では、「Edyを使える店などは地方にはほとんどない」という指摘もあったけど、シロートさんならともかく、ビジネスに携わるプロが、そんな幼稚なコト書いてちゃいけないの。
だってさ、たとい地方にFeliCa対応店舗がなくても、今後icシリーズが出たら、ネットワーク上にはおそらく凄い勢いで、対応店舗&サービスが増えるだろうことは、ほぼ間違いんだからさ。
要するに、「ケータイの最新機能をよく使う人」=「ケータイサービスをよく使う人」なんだから、FeliCaが出ていきなり、リアル店舗であるam/pmの売り上げが上がるとか、チケットぴあの電子化が進むとか、そういうこととはむしろ逆の事象が、最初のフェーズでは起こってくるはずなんだよ。
逆に言えば、自治体のIDカードにiモードFeliCaを使うとか、医療ソリューションに活用とか、そういう部分では、かなりの部分が、初期は必ず失敗に終わる。
少なくとも、向こう2~3年、そういうリアル系で、なおかつユニバーサルを志向するサービスは、絶対に商売にならないと断言してもいい。仮に商売になったとしても、それは、現状のblogとか、ソーシャルネットワーキング並みの「新しいもんバブル」であることはまず確実だろうよ。
だから多分、最初にiモードFeliCaによる決済がもっとも有望なのは、ズバリ、勝手サイトでゲームアプリなんかの決済手段だよ。だって、ユーザー層がほぼ100%に近い比率で重なってるんだから。(笑)
もちろん、最近急成長のケータイ通販や、モバイルオークションでの決済手段への活用がこれに続く。
こうしたサービスへの需要は、東京も地方もほとんど関係ないんだから、地方の人にとって、FeliCaが意味がないわけはないだろう。強いていえば、地方からますますカネが中央に集まる構造は加速するかもしれないけど、そんなことは、FeliCaが出ようが出まいが、どうせそうなることなんだからね。
●高機能ケータイの「ユニバーサル化」を阻むいくつかの要因
それに、たといドコモがFeliCaを、「万人に使ってほしい」と言ったり思っていたりしても、それを額面通りに受け取るかどうかは別の話だよね。
前にも書いたけど、iモードFeliCaのオペレーションにiアプリが必須である以上、端末は一定以上にコンパクトにはなりえないし、コストも下がらない。
さらに言うと、一部の端末メーカーは、端末のハードウェアコストが高く付くと、コスト償却的の折り合いをつけるためか、てきめんに外装パーツのクオリティに手を抜いてきた。
(NECの初期FOMAのN2002、N2102Vの樹脂質感の悪さとか、富士通のF900iの、ヒンジ部の組み付け部の精度の悪さを見よ。)
こういう、デザイン以前の「質感」の点でも、機能の限定された安い端末に比べ、むしろ高機能機種ほど見た目や造りが安っぽい、というのは、日本のインセンティブモデルが生んだ最大の弊害だけど、こうした傾向も、まだまだ一部で残るかもしれない。
ちょっと旧い統計を参照すると、日本人の過半数は、携帯電話の購入に支払っていい金額として「7000円未満」と回答してるそうな。最新のF900icが、その価格ゾーン以下まで下がってくるには、まだ1年以上を要する。そう考えれば、今までに携帯電話で出たすべての高付加価値なサービスは、端末が出た瞬間にブレイクする事例は少なくて、端末価格がこなれてくるまでには、必ず一定のタイムラグが伴う。
余談だけど、900iシリーズが投入されたにも関わらず、ドコモが純増シェアでauに勝てないのはこのへんの理由も大きいはず。大企業が言うところの「万人」にとっては、2~3万円以上もするケータイなどは、すでに購入の選択肢から外れてるんだから。 逆に言えば、現行900iが「型落ち」になって実売で5~6,000円になる今年末ごろ、auはよほど頑張らないと、ドコモの巻き返しに合うだろう。
●人間の習慣を変えるには数年はかかる
今の世の中ですら、クレジットカードですら、まだほとんど使わない人は結構な数だけいる。
ならば、「ケータイサイフ」なんて概念が、いきなり万人にアピールするわけはないでしょう。
発表会でも、「もし落としたらどうするんですか?」とか、そういう間抜けな質問が寄せられていたけど、(あえて名は秘すが、こういうバカな質問をする出版社とか新聞社は、大体いつも顔ぶれが決まっている)それにしたって、落とすモノが、サイフからケータイに変わるだけであって、利用者が抱えるリスクまで大きくなるわけじゃない。
それでも、人間の感覚はいたって保守的だから、すぐに意識を切り替えることは確かにできないだろう。
19世紀後半、イギリスには「自動車条例」という法律があって、「クルマは危険だから、公道を走るときは、必ず前に人か馬を走らせて、“車が来るぞ”と先触れさせなければないあない」というのがあったそうな。 この条例のおかげで、イギリスはモータリゼーションでフランスやドイツに数十年の遅れを取ったそうだけど、上記はそれと同じコトなんだよね。
●FeliCaのビジネスモデルに感じる「矛盾」と「良心」
んで、タイトルに、「壮大な慈善事業」と書いた所以なんだけど、
このサービスは、少なくともドコモと、そして、既存のカード事業やポイントサービス事業をやってきた大手企業よりも、むしろ小規模事業者やベンチャーなど、ニッチなビジネスをやるところにとって、かなりの可能性を感じるわけ。
少なくとも、そのビジネスモデルを聞く限り、現状で利益率約2割、1兆円ほどの営業利益があるドコモにとって、「今以上の成長」を期待させてくれるものではないという点も踏まえ、あえて「慈善事業」と表現してみた。
iモード企画部長の夏野氏によると、iモードFeliCaのビジネスモデルは下記だとのこと。
(長期的モデル)
1・「ARPU依存モデル」からの脱却、手数料・トランザクションモデルへの移行
2・FeliCaチップを、自社の関連会社(フェリカネットワークス)でライセンス販売することによる収益
3・将来的には、金融業などへの多角化
(短期的モデル)
4・解約率を低減させる効果への期待
まず「1」についてだが、手数料モデルで、現状の営業利益1兆円に匹敵するような、あるいはそれを補完できるに足るモデルをFeliCaで作るためには、どう計算しても、日本人1億2千万人が、狂ったような勢いでFeliCaでモノを買ったり、チケット購入したりする必要があるはずだよね。(笑) 無論、そんな時代はいつまで経ってもやってはこない。
だって、パケ代は、そのまま「料金・価格」なわけだけど、FeliCaは料金・価格の「手数料」なんだからさ、もともとの単価もトランザクション数も全然ケタが違うわけでしょう。フェリカネットワークスのインタビューによると、「最終的に6000万台を目指す」とのことだが、数年後、仮にこの数字が達成できたからと言って、ドコモの決算は、現状維持すら難しいだろうと。
次に「2」についてだけど、ちょっと考えれば子供でもわかる矛盾であって、自社のシェアを高めるべくドコモが頑張れば頑張るほど、少なくとも理論上、ライバルキャリアへのFeliCa需要は下がるはずなんだよね。
「3」については、言っちゃ悪いけど、『ドコモ銀行・ドコモファイナンス』なんて概念、それって独占禁止法的にどうなのよ?と言いたくなる。(笑)
現状の独禁法改正案試案では、省庁間の高度に政治的駆け引きにより、無線通信キャリアは独禁法の規制対象外となったらしいが、いずれ、NTTドコモが、網をサービスする土管会社と、ISP&各種サービスプロバイダに分割さっれる可能性は依然として否定できんのであって、現状ママで、ドコモが銀行業務に乗り出すなどというのは、とても信じられない話ではある。
日本人は、(というか、お役人はというべきか)どうも、固定電話のドミナント規制にはやたら神経質なくせに、NTT法の規制範囲にせよ何にせよ、ケータイキャリアへのドミナント規制には、妙に寛容だ。固定網では97%シェアのNTT東西に比べ、ドコモのシェアは所詮50%とチョイだから比較にならないという指摘もあるが、ここらあたりは、そういう数字で比較しちゃいかんのであって、利用「率」で比較すれば、いかにドコモがガリバー的存在かってのは自明でしょう。
でもまぁ、れっきとした都銀が、サラ金に出資する時代だから、これはもう僕なぞには「わからない」としか言いようがないよね。
で、「4」の解約率低減効果だけど、おそらくドコモが、iモードFeliCaのために行ってきた、そして今後行うであろう莫大な投資を考えると、FeliCaは「短期的には」効果的な投資ではないだろうよ。むしろ、たとい10億でもいいから、端末デザインを改善したり、外装が大きくてもカッコよく見えるデザインのあり方を研究するのにお金を払ったほうが、解約率には対費用効果があるはずだろう。
かつてインタビューで、「infobarでは100万台は売れない」と言ったらしいが、そういうことじゃなくって、「高くてもいいからコレがほしい!」と指名買いしたくなる、10万台売れる端末を、10モデル出すべきなんだよ。現状を見てると、端末メーカーも含めて、そういう生産構造を模索していくべき時期に来てるし、ドコモにしてみれば、そうした投資をメーカーに対して行うことが、解約率を下げる良策なんじゃないの?といいたくなる。
いずれにせよ、iモードFeliCaの投入は、久々にエキサイティングなニュースであることは間違いないと思う。そしてFeliCaは、大手事業者よりも、むしろ小規模な事業者に、より多くの商機をもたらしてくれるだろうという点でも期待はしていいと思う。
多分これからの「おサイフケータイ」は、PCインターネットのコンテンツなんかについても、ケータイで決済なんていうところを結構開発してくれるんじゃないかと思うんだよね。個人的にはユニバーサルサービスなんてどうでもいいけど、むしろこういうとこに期待したいです。
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