自宅から徒歩2分未満の怪しい店
僕が住んでいる高円寺というのは、ヘンな街です。
他の街、たとえば丸の内や大手町、六本木ヒルズあたりに居たら、単なる「アブない人」にしか見えような人が数多く歩いてる。高円寺と言うと、おそらく多くの人は「フォークの街」とか「ミュージシャンの街」みたいなイメージをお持ちかもしれないし、もうちょっと詳しい人なら、「エスニック&エコロジー系な人も多そう」ぐらいの知識もお持ちだろう。
でも実際のところ、この街を歩いていると、そのどれにもカテゴライズ不可能な、もっとヘンテコな人も数多く見かけるのだ。
こないだは、髪の毛をお下げの三つ編みにして赤いリボンを結び、さらに口ひげを口にたくわえた男性が歩いていた。
その男性が、いかなる美意識・哲学でそうしたカッコをしているのかは、凡庸な僕などにはよくわからない。
南高円寺のすぐ近所にある「ルック商店街」(最近では下北沢と並んで東京の古着屋のメッカとなっている)を歩いていたら、ごくフツーの近所のオバハンといった風情の女性とすれ違ったのだが、すれ違いざま目に入ってきたTシャツのプリントをよく見てみると、血文字で
「PIZZA OF DEATH」
と、書かれていたりする。
高円寺がステキなところは、そうした人を見ても誰も驚かず、ましてや指を指したり笑ったりする人もいないところだ。あまりにも街の風景に溶け込んでいる。おそらく、こういう街は日本にもそうないんじゃないだろうか。
最近では、確かに高円寺もオシャレな店が増えてきた。休日のルック商店街などは、まるで「Zipper」とか「Cutie」から飛び出してきたような女の子たちで溢れている。だがその一方で、やはり、どのようなゲマインシャフトなりゲセルシャフトに属しているのか、プロファイリングすることがまったく不可能な、上記のような人もちらほら見かけたりする。
このあたりのディープな高円寺カルチャー情報は、わが友人、若林ヨウジロウ氏が運営する「サロン・ド・高円寺」あたりでもご覧いただくとして(最近ずいぶんご無沙汰だけど元気ですか?若林さん)、今日は、僕の自宅からそれこそ徒歩1~2分のところにある、ヘンテコな店を二つほど紹介しよう。
この店、最近は雑誌「散歩道の手帖」などでも取り上げられたりと、だんだんメジャーになってきた。
数ヶ月前、自宅から歩いて2分にもならないところにこの店がオープンして以来、興味津々だったのだが、あまりの怪しさに、意を決して入るまでに2ヶ月以上もかかってしまった。
クエスチョンは、コーヒーが安い上に美味い。すべての種類の珈琲が280円だ。MENUに、『北千住の○○○の豆を使用』などと書いてある((珈琲に詳しくない僕には、その豆がどう優れているのかなどはさっぱりわからない。かと言って、誰にでもわかるような説明書きも見当たらない)
流れていたBGMは、なぜか山口百恵だった。
店内もまた、ヘンテコなインテリアと小物で溢れている。マスター(とは言ってもまだとても若い男性だ)の友人にアーティストな人がいるらしく、小物や、店内で売られているステッカーやカンバッジなどは、その友人の手になるオリジナルだという。
こんなステッカーが100円だ。
これまた、僕の自宅から徒歩1分とない至近距離にある店。
ベニア板にマジックで書きなぐった看板。まるで「見つけないくれ」と言わんばかりの存在感を殺した店構え。こういうラーメン屋を経営する人物の作るラーメンとは、一体どんな味がするのだろう。と意を決して入ってみた。
っていうか、自宅からもっと近所の喫茶店やラーメン屋に入るのに、なぜこうまで覚悟が必要なんだろう‥。
入ってみると、ピカピカに磨き上げられた厨房。そして、置いてある小物や箸入れ、手書きのメニューなど、どれをとっても一部のスキもないセンスの良さには内心驚かされた。客は僕一人だが、店主は時候の挨拶など無駄なおしゃべりをするでもない。ただ黙々と注文されたラーメンを作っている。こういう店のラーメンは相当期待できそうだ。
本棚に、和紙でできた手帳大のノートがあり、そこには手書きで、「店主は人見知りなので、ラーメンに関する説明はこちらをお読み下さい」と書かれている。そこには店主の作るラーメンに関するうんちくがズラズラと並んでいるのだが、店主の眼前でそれを読んでいても、やはり店主は一言も発しない。ただ黙々とラーメンを作っている。(きっと本当に人見知りな人なのだろう。)
で、肝心のラーメンだが、ひいき目なしにかなり美味しかった。それでも僕は店主に習って、ただ黙々とその美味しいラーメンを食い終わり、大いに満足し、それでも帰りざまに一言、心から「美味しかったです」と声をかけたのだが、店主は真顔で、思いつめたように斜め下を向き、
「いや、まだまだです」
と言った。
客に「うまかった」と言われたら、「ありがとう」ぐらいは言うのが商売人というものだろう。
でも僕には、なぜかこの店主の考えが、とてもよくわかるような気がした。
このストイックかつ求道的な店主は、きっと客のことなどはどうでもいいに違いない。
おそらく、ただ自分が納得できる理想のラーメン、理想のラーメン屋、という、いわば「ラーメン屋のイデア」を、ただひたすら追求しているのに違いない。
そうでもなければ、こんな地味な裏通りに、わざと目立たないような店構えのラーメン屋など開くものか。
人目など気にもせず、ただただ自分の理想を追求しようとする求道的な喫茶店やラーメン屋。きっと、この人たちはとても幸せな人なんだろうなぁと思う。
そんな人たちが店を出している高円寺が、僕は大好きだ。
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強烈に怪しいオーラを放つ
と評判の [続きを読む]
受信: 2005/10/14 01:48

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