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2004/07/24

ドコモの新ビジネスモデルとは??

ドコモ、FeliCaの新ビジネスモデルを明かす

この「新ビジネスモデル」というものについて簡単に考察してみよう。

直感的に奇妙に感じるのは、従来ドコモが行ってきたビジネスとのスケールの差。
翌日のカンファレンスでは、このB2Bファイナンスに、とりあえず100億円を用意したというコメントも聞かれたが、NTTドコモという会社は、たとえばFOMAでW-CDMA網を完備するのにも、1兆円を越える投資を行い、それにより主に通信料収入で1兆円単位の営業利益を出してきたという重厚長大型の会社ではなかったのか。初期の頃のW-CDMA基地局は、大体一基設置するのに1億円のコストがかかったと言われる。
(決算書を見ればわかるが、同社の営業利益の大半は国内ユーザーの通信料収入によって稼ぎ出されており、現状では海外へのiモード投資からのリターンはほとんどない)

(7月25日文章の一部訂正、加筆をしています:下記の記述は、あくまでドコモのリリースによる確定事項ではなく、三田個人の予想・憶測も含まれていることにご注意ください)

◎単純ファイナンスでは帳尻が合わない計算
FeliCaインフラ普及促進のために用意されたとされる100億円だが、これは、主としてリアル系事業者のPOSレジにFeliCaリーダ/ライタを設置するための補助金として企業にファイナンスされるという。(それ以外にもトランザクションのシステム開発などへの投資もあるのかもしれない)仮にその100億が、年利30%という高率で回る破格の投資だったとしても、年間での利ざやは30億円程度。仮に、その10倍の規模でファイナンスを進めたとしても、300億程度にしかならない計算となる。
しかも、そんな高率のリターンを期待するほどのファイナンスなら、多くの大企業は自らが必要と感じられる時期が着たら、さっさと自前で投資するだろう。
大手プレイヤーの参入を呼び込みたいならば、上記ほどの高率な利益期待値を設定することはできないはずだ。

さらに言えば、ドコモの援助によって各リアル系事業者が備えたFeliCaでの決済インフラは、今後、auやVodafoneの携帯電話にもFeliCaが搭載されたら、やはり使えるようになる可能性は高いだろう。(それともドコモ以外のケータイでは使えないよう何らかのブロックでもかけるというなら話は別だが)
こうすると、一見ドコモは、FeliCaインフラを普及させることで、一所懸命「他人のための土管」を作っているようにすら思えてくる。それだけでは、とても従来の通信料収入に替わるだけのモデルたりえないだろう。

◎FeliCa決済の「全て」から上がりを取る算段か?
だが、しかしだ。
ひょっとしてこのモデルは、仮にそれが他社のケータイであれ何であれ、FeliCa決済のためのトランザクションが発生するたび、インフラ設置を手伝ってやったドコモに、ちょこちょことカネが入るという仕組みを作ってしまおうということなのではないだろうか?
そうなれば、将来的にauやらDDIポケットまで、ケータイというケータイでFeliCaが使われるたびに、(場合によっては、SONYのカード型Edyの決済ですら)ドコモはトランザクションフィーを取れることになる。
もしかして、このファイナンス事業には、こういったビジネスモデルが描かれているのではないだろうか?

ビットワレット社の試算によると、日本国内全体では、3,000円未満の個人消費は、年間で約60兆円の規模があるということだ。
(この数値は極めて重要な指標である。FeliCaビジネスに興味のある方は頭に刷り込んでおきたい)

現状、日本でクレジットカードを持っている人は人口の半分程度だから、「おサイフケータイ」が、それ以上の普及を見せるとは考えにくい。(フェリカネットワークの普及目標がいみじくも人口の半分ほどの「6000万台」であることは、興味深い符合である)
いずれにせよ、60兆円の小口現金決済に対して、将来そのうちの何割を非接触ICカード決済にできるかがが、ドコモの将来の浮沈を左右するということだろう。

仮に、前記の「他社ケータイも含めた、すべてのFeliCaトランザクションから投資を回収」という仮定が正しかったとしよう。
さらに仮定として、日本の小口決済の、仮に2割程度が「おサイフケータイ」での決済になったとして、日本全体で年間約12兆円。そのうち本当に上記のように、他社ケータイのトランザクションに対してもドコモが投資を回収する仕組みとなっていたとすれば、仮にトランザクションの3%がドコモの懐に入るとして、年間で最大3600億円あまりとなる。
もちろん、すべての事業者がFeliCa設置をドコモのファイナンスでやるとは考えられないから、これは考えうる最大限の値である。

どちらにせよ、仮に通信料収入が今後頭打ちでも、また他社に累計シェアを奪われようとも、最大でこのぐらいのボリュームが想定出来るなら、ドコモは、「1兆円企業」に見合うだけの売上げと利益は保てるのかもしれない。
だが、これはあくまで、日本人の多くが携帯電話で決済をする時代が来たころの「最終予測」だ。
確かに過去5年を振り返ってみれば、ドコモはiモードで、ユビキタスネットワーキングという「新常識」を創造してしまった。これと同等のマジックを、また起こすことができれば、同社はさらなる成長を遂げることができるのだろう。

かと言って、FeliCaは別にドコモの所有物ではないし、また、KDDIやVodafoneに、ドコモに対抗して同様のファイナンスができるだけの資力がなかったとしても、Sony本体は必ずしもそうではあるまい。
さらにいえば、たとえばコンビニやファーストフードなどの大手にとっては、小口現金決済に比べ、手数料が余計にかかる「ケータイ経由」という仕組みが、本当に事業者メリットがあるかどうかはまだ結論が出たわけではない。(同じ趣旨のことを先日のVISAのカンファレンスでも言われていた)
FeliCaは、店舗ごとのポイントシステムASPなどをセットにすることで、各リアル系プレイヤーに、FeliCaの導入メリットを付加しようと必死だが、そもそも全ての店舗がポイントでいちいちヒモ付けられたら、消費者だっていい加減嫌気がさすだろう。

現在、Edyを導入している店舗では、「am/pm」をはじめ、居酒屋チェーンの「甘太郎」などまで、結構な勢いで「Edy優待割引」を行っている店もあるが、それはEdyがまだ珍しい時期だけの話だろう。夏野氏言うところの「FeliCaでレジ打ちの労力が削減できる」というのも、現金決済があくまで主流である以上、FeliCaで明確な人減らし効果などが、すべての事業者で出てくるとは考えにくい。強いて言えば、レジが多数ラインあるスーパーマーケットなどでは、恐らくそれなりの人員削減効果が出るだろう。
だが、コンビニなどは、ハナっからレジはせいぜい2箇所しかない上、万一トラブルが発生したとき、レジが止まってしまう時間の長さは、現金決済よりもFeliCaの方が格段に長い。恐らく「プラマイゼロ」ぐらいがオチだろう。

いずれにせよ、従来のような「基地局敷設>通信料収入」の場合、有無を言わせずシステム的に契約者の囲い込みが出来るわけだが、果たしてリアル決済で、しかもFeliCaという「他人の褌」でそんなことが可能だろうか?

◎もっと無形の「知的資産」にこそ投資をしてほしい
もともとiモードが成功したのは、通信網とISP、さらにはその上に乗っかるコンテンツまでを垂直統合してしまったことで、オペレータにバリューの集中が起こるカラクリを作ったことがもっとも大きいというのは既に定説である。実際、ドコモの携帯電話でネットアクセスしたい場合、ドコモではない、他のISPを選ぶという選択肢は事実上皆無に近い。
(これを、ドコモ流に表現すると『バリューチェーン』とか言うらしいが)

iモードのようなビジネスモデルは、過去、海外に類例がないため、「諸外国の事例」を見るのが好きな日本のお役所は、こうしたドコモの独走を許してしまった。穿った見方をすれば、モバイルITビジネスの急激な進化は、今後の日本の「国策」としても産業政策上有利だろうというスケベ心もあったのかもしれない。
実際、現在法案提出が予定されている独禁法の改正案でも、またもや携帯キャリアは規制の対象から外されたという。このあたり、経済産業省あたりが(総務省の意向に反して)かなり動いたとの噂もあるようだ。

だが、こうしたことが、本当に良かったことなのかどうか、僕などには容易に判断はできない。
iモードのパケ代が若者の懐を圧迫し(しかもこのblogで繰り返し触れてきたように、必ずしもITリテラシーの高くない若者を中心にだ)、いわゆる「ケータイの一人勝ち」と言われる現象を作った。だが、そこで得られた金は、要するに「電波設備の使用料」として雲散霧消してしまうバリューである。
それで、次世代ケータイたるFOMAのキラーコンテンツたるべく出てきたものは、17年も前に作られた『ドラクエ』やら『FF』の焼き直しであったことを考えると、実のところ、こうして集中した莫大な富が、本当の意味での「コンテンツ(=無形知的資産)」を創造するために活用されているとは言いがたい。

日本が海外に輸出しうるもっとも有望な商品とは、結局のところ国によってさまざまに異なる電波行政に基づくようなビジネスモデルではない。最後に求められるのは、やはり「コンテンツ」である。
「iモード」などという、所詮は日本の法制下でのみ成立できるようなシステムを、海外にライセンスしようなどという魂胆が上手く行くはずなどないではないか。

ドコモがよく言うところの「コンテンツ・ポートフォリオ」という概念は、平たく言うと、「コンテンツの収支予測は往々にして外れるから、当たろうが外そうが他人に勝手にやらせ、グロスで利ざやを取ってしまえ」というものだ。これは別に目新しい概念でも何でもなく、20年前に任天堂がはじめた「ファミコンでゲームソフトを作って売ることを許諾するライセンス」という考え方のパクリである。

iモードの導入に続き、またもやFeliCaで、こうした「土管バリュー」を志向するドコモに比べれば、「コンテンツ」というリスクの高い分野に、果敢に飛び込んでいこうとするKDDIの方が、個人的には好感が持てる。
仮にそれがドコモに先んじられたKDDIの「苦肉の策」だったのだとしてもだ。

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