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2004/07/10

ホームレスが売る雑誌「The Big Issue」

先日神戸に行ったとき初めて、あのホームレスが売る雑誌「The Big Issue 日本版」が売られているのを見ることができた。
bigissue.jpg
(映像)一部買ってから、「紹介したいから写真撮らせて」とお願いしたら、「顔を写さなければ」と快く了承してくれた。おじさん、こんなショットでごめんね。

すでに各所でも紹介されているが、「ビックイシュー」は、ホームレスの救済を目的として発行された英国発の雑誌だ。24の国で発行され、売ることができるのはホームレスだけと定められている。その使命は、「ホームレスの人たちの救済(チャリティ)ではなく、彼らの仕事をつくることにある」(日本版ホームページより)という。

「ビックイシュー」の販売を希望するホームレスは、最初は一冊200円の雑誌を10冊無料で受け取り、この売り上げ2,000円を元手に、以後は定価の45%(90円)で仕入れた雑誌を販売し、55%(110円)を販売者の収入とする。

◎堂々たる「商業雑誌」
「ビックイッシュー」は、現在のところ月刊(隔週発行を目指している)で最新号は10号。ご覧の通り堂々たる「雑誌」だ。全30ページとボリュームは少ないが、今のところ表2と表3以外には一切広告がないため、30ページの全てが誌面であり、読み応えはそれなりにある。
今月から本創刊となったリクルートの「R25」は、プレ創刊号では全52ページ中の16ページが広告だったから、それと比べても遜色ないボリュームだと言える。

そして記事のクオリティも高い。国際的な雑誌だけあって、巻頭はブラッド・ピットのインタビューだし(過去の巻頭インタビューには、矢井田瞳のようなドメスティックアーティストもいる)、遠くアフリカで取材したグラビア満載の記事や(24カ国販売の強みか)、国内記事でも「SOHOのホワイトカラー」などと言った、個人的には思わずじっくり読み込んでしまったような記事まであった。

bigissue2.jpg

「R25」は、最近取材する機会があったのだが、同フリーマガジンが、もはやカネを出して雑誌を買わなくなってしまった、20台後半の「無関心な層」に向けて作られているのに対して、「ビックイシュー」は明らかに、ちゃんとした「問題意識」を持っている人が読む雑誌だ。 それゆえR25は、残念ながら、ちょっと想定読者レベルが低すぎて、そのビジネスモデルの秀逸さは認めはするものの、僕個人としては、とても毎号読む気にはなれなかったのも事実だ。

「ビックイシュー」は、ホームレスが販売することで、彼らの仕事と生活の糧を作る雑誌だが、記事制作・編集はあくまで、その道の「プロ」が手がけていることが良いと思う。雑誌の制作までも全てホームレスに任せてしまったら、それはまさに「チャリティ」になってしまうからだ。そういう意味では、「ビックイッシュー」が、あくまで営利的組織であって、公益性の高いビジネスを展開しているという事実には共感を覚える。

◎こんなスキームがケータイでもあったらいいのに
「ビックイッシュー」のような雑誌を見てつくづく思うのは、「どうしてこういう公共性の高いビジネスの仕組みがケータイでも作れないのだろう?」ということだ。
コンテンツプロバイダもキャリアも、決して口にこそ出さないが、ケータイのヘビーユーザーというのは、平均すれば、社会的には、どちらかといえば「弱者」に属する場合が多いと思う。ならば、別にホームレスを救済するためでなくてもいいから、もっと公益性のある「営利事業」をケータイでやることもできるんじゃないか。
それとも、ケータイビジネスというのは、それほどまでに、がむしゃらに儲けを追求しなければやっていけないほど余裕のないものなのだろうか?

以前、日経パソコンの連載コラムで、ホームレスの携帯電話利用について書いたことがある。
僕は、そのコラム記事を書くために新宿中央公園を1日歩き回り、いろいろなホームレスから直接話を聞いて歩いたが、実はホームレスのケータイ所有率は案外低くない。(もちろん世間の平均よりはずっと低いが)棲む家は失ってしまっても、再び社会との紐帯を取り戻したいと考えているホームレスは、ケータイを唯一の社会とのつながりにしているケースも少なくないようだ。

ケータイは今のところ、PCと連動して使う「IT強者」のツールというよりも、利用率からすれば、明らかにPCを持たず、情報発信や検索の力がPCより弱い「IT弱者」のツールという色彩が強い。「ビックイシュー」のようなスタイルがケータイでもできないものだろうか?それが何かはまだわからないが、これからも折に触れ考えていきたい。

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