着うたに競争原理導入は歓迎だが(1)
「着うた」参入妨害の疑い、公取委が大手レコード会社に立ち入り
更新が滞っていたとはいえ、ちょっと古いニュースですみません。
降って湧いたこのニュース、恐らく一番驚いているのは、携帯ビジネスに携わっている当事者なんじゃないだろうか。(笑)
だってさ、着うたの囲い込みが「独禁法に抵触の疑いあり」と言うなら、もっともっと独禁法の精神無視の商売がまかり通ってきたのが、日本の携帯電話ビジネスの実態だったんじゃないの?
僕の素朴な感想としては、「機会損失を被る事業者が現実に存在しない限り、公取の介入は発動されないのだなぁ」という、ある意味至極当たり前なものだ。
「着メロ事業者」という「被害者」が明快に存在するからこそ「着うた」は刺されたわけで、歴史の浅い携帯ビジネスにおいては、公式サイトに入れない事業者は、携帯キャリアに対して、明快に「被害者」となるまでの産業規模にすら達していなかった。結局そういうことなのだろう。
着うたビジネスは、日本のメジャーなレコード会社5社が共同して設立したレーベルモバイルが、ダウンロードシェアの7割以上を占めるという状況となっていた。
ちなみに、この7割というシェアは、レーベルモバイル自身は決して積極的にリリースしなかった数値で、以前僕が同社に取材したときも、『シェアは非公開』と回答されたものだ。
(しかし、新聞などで数値が出てる以上、誰か別の人にはちゃんと回答したってことなんだよね。)
先日のニュースでも報道されたが、柴咲コウ歌う「セカチュー」の主題歌が、着うたダウンロード数の新記録を樹立して、着うたDL数すべてのうち半分近くをも占めたんだそうな。
「柴咲コウ」「セカチュー」という、あまりにもケータイユーザーの定性傾向バリバリな案の定的キーワードにオレは爆笑したけど、本来、多様な嗜好で選ばれるべきコンテンツに、こうしたバカバカしいまでの一極集中(=一網打尽的マスマーケティングで大衆騙されまくり)が起こるのが、携帯ビジネスが大企業にとっても「おいしい」とされる所以なのだろう。
実際、今回の公取の立ち入り検査は、着メロビジネスが1000億円規模のビックビジネスに成長して、産業上も無視できない勢力になったことの証左なのだろう。
着メロ事業者から見れば、JASRACに一曲5円ぽっち払えば、柴咲コウだろうがなんだろうが好きにMIDIデータ作って配信できる着メロでウハウハだったのに、生の音源となると、原盤権やら著作隣接権やら権利関係が面倒になるから、すでに1年以上前から、着メロ事業者たちは焦りを強めていた。
「メジャーアーティストの音源が使えなくても、インディーズもあるし、着うたの需要はもっと他にもあるはずだ」と語ったのは、さる大手着メロサービスのプロデューサーだが、1年チョイ前に、着メロ・着うた事業者を集中的に取材したとき、着メロ事業者の焦燥は肌で感じられたものだ。
恐らくその時点で彼らには、「メジャーアーティストの原盤権をグループ内で囲い込んでいるレーベルモバイルはズルい」などという発想自体も、ほとんどなかったようように思う。
それも当然だろう。彼らが着メロサービスを提供している「公式サイト」というビジネスモデル自体、どう考えても独禁法に照らして本当にクリーンかどうか、かなり疑わしいものなんだから。
で、実際のところはどうなったか。
着メロと着うたは、レーベルモバイルの寡占効果のおかげもあり、結果的にはコンテンツ料金の違いで、立派にユーザー層がセグメントされてしまったようだ。3Gの比較安価なパケ代や定額制の恩恵があったところで、従来の着メロユーザーの多くは、着うたに対して「1曲105円払うなんて高い!」と感じたらしい。
だが、それもあくまで囲い込みが故の「結果論」でしかない。
仮に大手レコード会社が、原盤権と著作隣接権を、自社の傘下以外にも許諾せよと公取から勧告されたら、着うたの状況は大きく様変わりするだろうと思う。
(少なくとも、かつてドコモがiモードの接続をオープン化したときのような、形だけ開放して実質は参入障壁だらけという仕組みにするようなセコワザを、レコード会社も使わなければ、という但し書き付きだが)
だが、冷静に考えてみると、原盤権のライセンスが実施された方がむしろ、着メロビジネスにおける負け組企業の「死期」を早める結果になるんじゃないだろうか?
大体、imenuをざっと眺めても、着メロ事業者は170サイトほどもある。(その呆れるほどの集中ぶりは、90年代前半のコンシューマゲーム業界に酷似している。)
それに加えて公式メニューに入ってない勝手サイト事業者も含めたら、呆れるほどの着メロ一極集中なわけだが、こんなに数が多いんじゃ、事業者同士のカルテルや価格協定もとても無理だろう。レコード会社が、これだけ多いCPに原盤権を許諾しようものなら、「とりあえず柴咲コウは押さえとけ!」(笑)とばかりに、壊滅的な値下げ&サービス合戦が起こって市場はあっという間にクラッシュするんじゃないか?
このBlogを読んでる方は着メロやってる会社の方も多いので、神経逆撫では承知で敢えて申し上げるが、着メロなんていう、ケータイ持ってなければそもそも全く不要なビジネスが儲からなくなるのは、個人的には「大歓迎」である。
数年前、iモードの黎明期には、玉石混交で荒削りでも、とにかくさまざまな斬新なコンテンツへの試みが見られたケータイコンテンツだが、今のケータイ業界、誰しも口を開けば着メロ着メロ。名指しこそしないが、特に安易に上場した大手CPなどは、成長を担保するのに必死なのか、かつて技術ベンチャーだったはずの役員までが、最近は二言目には「着メロ」だという。
とにかく我々消費者は、この公取立ち入り調査の経緯をじっくり見守ろうじゃないか。その上で、レコード会社が原盤権をちゃんと許諾するかどうかを見極めることは勿論、着メロ事業者が、着うた事業において不正な競争をしないかどうかも冷静に見守りたいものだ。
と、玉虫色の結論を書いてとりあえず続く。
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