失敗するベンチャーの法則
以前、ある会社で携帯アプリのプロデュース&開発を手伝っていた時、かの板倉雄一郎氏が、おおむねこんな趣旨のことを言っておられたのを覚えている。
正確なセリフはうろ覚えなのだが、大意を書くとこんな内容だ。
「新しいサービスの普及を目論むベンチャーの多くが失敗に終わる理由は、それらが普及し尽くした段階でのメリットしか考えていないからだ」
けだし名言だと思った。
巷にあるモノやサービスを見ると、確かに上記で失敗したものはたくさんある。
たとえば、かつて大前研一氏が手がけた「エブリデイ・ドットコム」などは、こうした失敗の好例(「失敗を好例と呼ぶのも語弊があるけど)なのじゃないだろうか。
同社のサービスは、当初バーコードリーダーを販売してPCに接続させ、通販カタログなどで何でもワンタッチで注文~購入が可能というモデルだった。訴求ターゲット層は「主婦層」だったという。
最近はIT系ベンチャーの方法論もどんどん進化しているので、今改めて考えると、上記がいかに無理なモデルだったかは、なんとなく想像が付く人も多いのじゃないだろうか。
「携帯電話」という選択肢ができた今から考えると、「主婦層にパソコン」という組み合わせがそもそもまずかった。
主婦は、パソコン普及率が高い層ではない。通販のような「大量に売れる⇒コストダウン」という効果を狙うには、利用へのハードルは極力低くしなければならないはずなのだが、上記のようなサービスを享受するためには、まずパソコンを持っていなければならず、さらには、専用のバーコードリーダーを入手して、それをインストールして接続するだけの最低限の知識が必要になる。従来の通販カタログやTVショッピングに比べると、想定できるユーザー層は、せいぜいが100分の1程度なんじゃないだろうか。
今ならば、それこそ街頭でモデムをバラまいているYahoo!BBのように、バーコードリーダーをタダでバラまくようなこともすべきだったのかもしれない。しかしそれには莫大な先行投資が必要な上、そのバーコードリーダーを使って、本当に何でも簡単に買えるようになるその時がやってくるまでは、消費者にも多大なガマンを強いることになる。
「タダで配るなら迷惑にはならないだろう」というのは誤解もいいところで、ロクに使えもしないPC周辺機器を渡されて、「いずれ便利に使えるから捨てないで持っていてね」と言うのは、事業者の勝手な都合以外の何ものでもないと思う。
こうした、「鶏が先か卵が先か」という問題は、この種のサービスには常に付いて回る。最近で言えば、Edyカードリータ/ライタの「PaSoRi」などがまさにコレで、少なくともiモードFeliCa対応携帯電話が増える以前の段階では、いかにPaSoRiが安価であっても、どうしてわざわざカネを出して買わねばならないのか、その必要性を明快に持っている人はほとんどいなかっただろうと思う。
僕自身、仕事の関係で一応PaSoRiは入手したが、便利だと感じたのは、現時点では、せいぜいがSUICAの残額を自宅で確認できることと、F900iCのEdyに付与された100円分の「Edyギフト」を、FOMAのパケ代を使うことなく受け取ったときぐらいだ。(笑) もともとeLioカードを作ったのに合わせて、割引価格(1,000円)で手に入れたPaSoRiだが、この1,000円の投資を取り戻すには、もっともっとPaSoRiを使うシーンが増えてくれねばならない。
それでもPaSoRiは、「iモードFeliCa」という絶好の追い風が吹いた今、まだ今後有望な方なのではないだろうか。それにSONYは大企業だから、ユーザーに本当に利便性が出てくるまでの間の多大な投資に耐えることもできるだろう。
しかし、こうしたモノ以外にも、企業と消費者、双方にとって「負け-負け」となる失敗法則に乗っていそうなモノやサービスは、世の中に多いと感じる。それらについては、今後折りに触れて考えていきたい。
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