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2004/09/11

「おサイフケータイ」で財布の中のカードは減るのか?

以前からずっと疑問に感じていたのだが、iモードFeliCaが普及すれば、決済に使える場所が増えて、レンタルビデオからチェーン店まで、会員証も携帯電話の中に入って財布の中身は薄くなるという。

そんな時代は、一体いつになったらやってくるのだろう?
巷で、ドコモのような大企業が、「こうなりますよ」とアピールしていたり、携帯キャリアと利害を共通する一部マスメディアが(その最右翼はコンビニで売られているケータイ情報誌だ)あたりが、そうした主張に則った記事を掲載している現状では、それに異を唱えるのはなかなか勇気のいることだが、率直に言って、僕はそんな時代は、少なくともここ3年や5年はやってこないと思う。(3~5年後も僕が生きている限り多分このBlogも続いていることだろうから、もし、この主張が間違っていたらせいぜい笑ってやってください。)

いやそれどころか、ヘタすると「おサイフケータイ」のおかげで、サイフにはさらに余分なカードが増えるんじゃないかと思うほどだ。
そして、すでに現状でも、少しづつそうした兆候は出はじめているように思うのだ。

tenya.jpg
[画像]外食チェーン「てんや」の会員証は、当初は携帯電話のみのバーチャル会員証によるCRMを目指したが、今年4月より、物理的カードとの併用に「後退」してしまった。

◎普及段階では効果が実感できない「身軽な財布」効果
もっとも身近な事例は、「おサイフケータイ」の登場と同時にはじまったビックカメラのポイントカードだ。
現在は、FeliCaリーダ/ライタも設置を進めている段階のため、同店では店舗側のFeliCaリーダ/ライタがすべての店舗に対応しておらず、以前からのビックカメラ顧客は、従来からの磁気カードも依然として持ち続けなければならない。この磁気カードが本当に不要になるためには、少なくとも、その顧客が使う可能性のある店の全てで、ポイントカードがFeliCa対応になる必要がある。
少なくとも僕自身は、一番利用頻度の高い新宿店がFeliCaに対応してくれる日までは、磁気カードを捨てることはできない。一夜にしてリーダ/ライタが設置されるわけでない以上、その普及途上では、むしろ複数の方式が混在することで消費者にとっては不利になるということは先ほど書いた
これは、あくまでビックカメラだけの話なのだろうか?普及の「発展途上」では、こうしたことは今後、枚挙に暇がないほど起こる得ると思う。
だが、ここで問題なのでは、一体いつになったら「発展途上」は終わり、万人がケータイの中に会員証を持つ時代がやってくるのか?ということだ。

そもそも、一体そこまで頑張ってFeliCaリーダ/ライタを普及させることで、ビックカメラやユーザー双方に何のメリットがあるのか、率直に言って僕にはよくわからない。
確かにこれから先は、もっと便利になる「可能性」もあるだろう。FeliCaにボーナスとしてギフトポイントを贈与したり、懸賞でプレゼントをしたり、あるいはメールアドレスまで取得して顧客情報にリンクしていれば、来店頻度の下がった顧客や、あるいは逆に上がっている顧客に対して、来店してもらうことなく、個別に何らかのインセンティブをネット経由で与えることもできるだろう。

だが、こうした高度極まりないCRMというのは、高度化すればするほど、対費用効果の測定が困難になる上、本当に「優良顧客」となりうる層への着実なリーチができるのかどうかも疑問だ。

たとえば現状、家電量販店では、100万円近くもする大画面プラズマディスプレイや、大型の洗濯機や冷蔵庫などを買ってくれる高単価な顧客は、概して携帯電話の「アクティブユーザー」ではない。IT高リテラシーユーザー層というのは、リアルでの購買力は必ずしも高くはないのだ。(そもそも金持ちは、デパートの外商部から電話一本で、高価な品物を取り寄せたりすることを「ステータスの証」と考える傾向も強い)

それに現状、前記したような高度極まりないCRM施策を行うには、ビックカメラの基幹システム自体が全然追いついてない。以前からこのBlogで何度か触れているが、ビックカメラは、ネットショップと実店舗の間ですら、ポイントシステムに互換性がなく、それぞれ別にポイントを溜めなくてはならない。(店頭でこの件について質問したところ、「ネットショップはシステム管理会社が違うので」と説明を受けた)

FeliCaによるCRMと連動させ、「リアル=バーチャル」で縦横に顧客を囲い込むような、そんな高度なシステムが構築されるまでには、また、そうしたシステム構築への投資回収が決断ができるまでには、一体何年を要するのだろう。
多分、3年程度では無理だろうと僕は勝手に考えている。それはむしろ、人口動態の変化や、日本経済のサービス化など、消費者層のもっとマクロな変化までを待つ必要があるからだ。(具体的に言うと、一番可処分所得の高い団塊世代lリタイア層がフェードアウトして、逆にケータイリテラシーの高い若い世代の可処分所得が高まってくる10年後あたりには、こうした施策は有効になるのかもしれない)

結局、どうしてビックカメラやam/pmなど、メジャーどころでFeliCaが導入されるのかと言えば、それはドコモにとって、とにかくサービスを認知させたいという、消費者への「刷り込み」狙いであって、導入する店舗やフランチャイズの理屈からすれば、おサイフケータイで本当に利便性が確保できるジャンルは、必ずしもそうしたメジャーどころではないだろう。

そもそも、iモードFeliCaにおいては、真っ先に導入を決定した企業は、その多くが業界の2番手以下の企業であり、ANA(シェア2位)、GEO(TSUTAYAは導入しない)、am/pm(業界7位)など、あえて言えば、少しでも話題づくりや差別化をしたいという企業、言い方は悪いが「弱者連合」とでも言いたくなるような顔ぶれだ。コンビニの4分の1を占めるセブン/イレブン。最大手のJAL,圧倒的に店舗数の多いTSUTAYA、そしてクレジットカード世界最大手のVISAは、どうして進出してこようとしないのだろう?

◎失敗事例の多い「ケータイ会員証」
また、これはまだiモードFeliCaを使っていない事例だが、例の天丼のチェーン店「てんや」は、かつて携帯電話から空メールを送ってWEBアクセスする、携帯会員証&メールクーポンサービスをやっていたのが、この4月あたりからは、むしろそうした施策を後退させて、リアルの「会員証」を同時に発行する仕組みを導入してしまった。

僕はケータイビジネスオタクなので(笑)、店舗でこうしたケータイクーポンがあると必ず利用してみる。今までに10コぐらいの携帯クーポンを試したが、理屈はどうあれ、実際にオペレーション上も使い勝手がよく、消費者にとっても、普通に「便利」と感じられるサービスは数えるほどしかない。

当初から、ケータイだけで会員証があって、割引で「てんや」を利用していた僕から見ればこれは迷惑な話だ。
結局、財布の中に余計な会員証が一枚増えてしまった。それで毎週「てんや」から送られてくる割引クーポンメールだけでは、割引を受けることすらできず、会員証も常に提示する必要がある。
なぜそうなってしまったのか理由は定かには分からない。恐らくは「会員証もクーポンも、紙でやることで、今後はケータイユーザー以外にも利用機会を増やしたい」という動機付けがあるのかもしれない。

いずれにせよ、WEB会員証&メールクーポンが上手く行っているならば、むしろFeliCaに移行してもよさそうな「てんや」のクーポンシステムだが、それとは逆に紙の会員証を発行することになってしまったのは、こうした施策をバーチャル化することの難しさを象徴しているように思う。今後、こうしたITビジネス側から見た場合は「失敗」と呼べるような事例は、恐らくケータイFeliCaによるバーチャル会員証を導入した企業にも、数多く出て来るのではないだろうか。

前記した「エブリディ・ドットコム」の事例にも通じることだが、こうしたポイントカードはとにかく手段を限定せず、なるべく広く配布できることが、事業者にとっても消費者にとっても最重要要件となる。
だが、以前から述べているように、FeliCaは決してすべての携帯に搭載されるわけではない。ユニバーサルインフラたることを志向するサービスとしては基本的に不向きな手段であることが、最初から判明してしまっているのだ。
(普及数で言えば、「ブラウザフォン>アプリ対応端末>FeliCa対応端末」となるので、後者ほど、その「ネットワーク外部性」は、「数の少なさの二乗」で、がっくりと価値が減じる計算になる)

◎それでもiモードFeliCaには可能性があると思う
「おサイフケータイ」が登場したとき、夏野氏は、「他社に先駆けてFeliCaを搭載すれば、利便性の点で解約率を低減させる効果がある」と言っていたが、これは頭脳明晰なる夏野氏らしからぬ論理矛盾だ。
これは言ってみれば、『動画メールやテレビ電話ができるのは我が社だけです。便利でしょ』と言っているのに近い。事実、動画メールがなかなか一般的に使われるようにならない背景には、写メールなど静止画と異なり、キャリア間互換性がゼロに等しいという事情も大きいのではないか。

FeliCaの利便性は、明らかに普及数に応じて爆発的に高まるのだから、他社がやらない限定的なサービスを、一社だけでやっている時点では、FeliCaには、解約をストップさせるだけの利便性は確保されない。逆に、モバイルFeliCaが便利になるためには、ドコモのみならず、auやVodafoneにも搭載される必要があるわけだが、そうなった時点で、iモードFeliCaは「解約率を下げるための手段」ではなくなってしまう理屈だ。

そういう意味では、最初から、「ドコモさんだけでなく、他社にもどんどん参入してほしい」と主張しているフェリカネットワークス(SONYが58%株主)の主張の方がずっと的を得ていると思うのだ。

‥と、なにやら散々「FeliCaはダメだ」的趣旨を書いてきてしまったが、それでも僕は、FeliCaには将来性があると思う。というのは、実際に自分でF900icを持ってみて、使ってみて、一定以上の利便性が期待できる分野・業種・サービスというのは、確実に「ある」と感じたからだ。

それについては、改めてじっくり書いてみる予定だが、とりあえず触りだけ言うと、普及の途上段階においては、常に、こうしたサービスは「二つの顔」を使い分けなくてはならない宿命があるのだと思う。

一方の顔としては、普及を進めるためにひたすらメジャー感をアピールする必要があり、仮に赤字だろうが事業者メリットがなかろうが、「ほーら、こんなにメジャーですよ。使わないあなたは遅れててる人ですよヨ」的な訴求をするわけだが、他方でその実態としては、「2:8の法則」にしたがって、確実におサイフケータイを持っているユーザー層にターゲット層を絞った利便性の訴求も行われなければ早々に頓挫してしまうだろう。

要するに携帯電話に載るFeliCaは、表向き「ユニバーサルサービス」という顔でアピールされ、実際のところは、まずは「ケータイアクティブユーザー」が多く利用するサービスから普及を始めるだろうと思うのだ。

実際、現状の携帯ビジネスで見れば、着メロも同じではないか。元来、着メロは携帯電話を持っていなければ全く不要なコンテンツだったから、これだけの市場が立ち上がってくるとは誰も予想できなかった。
だが結果として、着メロは携帯コンテンツビジネスの中ではもっとも大きな比重を占めるに至った。

これは逆に言えば、「着メロが必要なのはケータイユーザーだけ」という、バカみたいな単純な理屈によるものだと思う。この考え方をモバイルFeliCaに当てはめて考えてみると、「iモードFeliCaのサービスが本当に便利なのは、ケータイユーザーだけ」なのであって、「リアル連携」などというのは、そもそも顧客ターゲットに対してミスマッチを生じている話なのだ。

今後3~5年までの間は、FeliCaは、「ケータイアクティブユーザー」がもっとも密集しているところに限定して、ビジネスとして成り立ってくるだろうと思う。
つまり、「リアル」ではなく、あくまで「バーチャル」からFeliCaは普及する。
そう予想するのだが、あなたどう思いますか?

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