« ドコモの災害用伝言板は素晴らしい。しかし‥ | トップページ | ちょっとだけ改造&近況報告 »

2004/10/27

モバイルセントレックスは各キャリアのシェアに影響を与えるか?

最近では、ほとんど企業向けIP電話情報誌となりつつある「日経コミュニケーション」、
最新号から3回連続で、主要3キャリアのモバイルセントレックスについての短期特集連載がはじまりました。
それぞれNTTドコモの同サービスである、「PASSAGE DUPLE」、KDDIの「OFFICE WISE」、そしてボーダフォンの「Vodafone Mobile Office」について、一号つづ解説をしていくそうです。

せっかく定期購読をしているのに、隈なく読むことがいつも少なく、勿体無い思いをしているのですが、この短期特集には個人的にも注目しております。

IM-N900il.bmp
[画像](C)NTTドコモ。
N900iLは、見た目こそFOMA900iとほとんど変わらないが、専用のインスタントメッセンジャーが内蔵され、プレゼンス表示により、従来の「社内内線電話」を超える高い利便性を提供する。SIにより専用のシステム開発が必要など、導入コスト・手間ともに大きいのは難点だが、その「志」は評価できる。

最近の日経BP社の雑誌は、「日経モバイル」が休刊して以来、モバイルについてまとめて読める媒体がないのが残念ではあります。
たとえば、例のTD-CDMA実証実験についての解説記事は、「日経バイト」に多く載っていましたし、モバイルセントレックスという切り口になると、今度は日経コミュニケーション。さらに一般消費者向けの情報誌となると、多数出ているパソコン&インターネット誌で、ごく散発的に掲載されるという感じで。
実際、「日経コミュニケーション」の記事でも、作表部分に明らかな誤植(KDDIのサービス対応端末に「V801SH」と書いてある)とかもあり、モバイルコンピューティングを専門とする記者の絶対数が足りていないのではないかという印象もあります。

そのへんの事情は、外野の人間である僕もまったく知らぬわけではないのですが、以前モバイル系VCの社長が述べた名言、「人間は本来モバイルな生き物なのだから、モバイルソリューションの進化は止まらない」というのは、まこと正しいと思うわけでして、老舗の日経BP社には、できれば硬派なモバイル専門誌を、たとい季刊ベースの増刊などでもいいから出してくれないかなと思います。


◎各社の新サービスは思ったほどにはシェアに影響していない
閑話休題、日本の携帯電話の契約数は、そろそろ飽和に向かうと以前より言われています。一人で複数台を持つ一部マニアを別にすれば、ケータイは「一人一台」が基本なので、今後、契約純増は減りこそそれ増えることはない。唯一増える可能性はプリペイド端末ですが、これもドコモなどが廃止に向かう方向をアナウンスするなど、日本ではこれ以上プリペイドが伸びることもなさそうですから、なおさらです。

更に、毎月公表される各キャリアの純増統計指標を見ても、巷で「au好調、ドコモ不利」と言われるほどに、両者の格差が開いているわけではない。むしろ、ドコモは今年上半期では「史上最低」とも言われる低い解約率を実現するなど、案外健闘しているし、定額ケータイをプッシュするauも、売れセンの上位がすべてWIN端末になっているわけでは決してない。
FOMAがいかに高機能でも、auのWIN端末がいかにケータイライフを変えようとも、まだまだ、「ケータイライフスタイルの変化が全国民規模で起こっている」、と言えるまでの状況ではなさそうです。
だから、ここ暫くは、シェアの変動にあまり一喜一憂する必要などはない、そう考えています。

そう考えると、早くとも2006年中盤以降とされるMNP(モバイルナンバーポータビリティ)が導入される前までは、従来の3キャリアのシェア構造が大きく変わるとは考えにくい。(強いて言えば、新規参入キャリアの問題や、SIPフォンなどの問題もありますが)
ここ1~2年で、各社のシェア変動要因になるものとして、案外バカにならないのが、この「モバイルセントレックス」ではないかと思うんですね。


◎モバイルセントレックスブームの裏にも「規制緩和」
マニアでない普通の消費者にとり、複数台のケータイを一人で持つという状況が一番多いのは、「一台は個人契約で、もう一台は法人名義の仕事用」という場合になります。
したがって今後、各キャリアの法人契約の多寡は、純増ペースに影響を与える比重を増していくだろうと思われます。このあたり、実数に基づく話ができるといいのですが、各キャリアの法人名義契約については、私自身いま一つ調査勉強不足でして、(というより、先ほど書いたように、こういう話題を掲載するメディア自体がほとんど存在していないので)明快に数字で予想や分析ができないのは残念ではあります。

モバイルセントレックスが俄かに活気を帯びてきた背景には、今年施行された改正電気通信事業法による規制緩和が大きいわけで、旧第一種携帯キャリアは、今後は電話料金などを事業者別に相対取引で個別に設定できるようになった。これなども、「規制が緩和されれば新しいビジネスは興ってくる」という見本のような話ではあります。

ただし、今回の日経コミュニケーションの記事を読んでみて、モバイルセントレックスの導入コストの大きさには正直なところ、とまどいを禁じえません。同誌の記事によると、ドコモのPASSAGE DUPLEは、300台導入した場合でシステム構築に5,000万円ほどかかるとのこと。
これだと、社員一人当たりのシステム投資額はざっくり16万円強。この投資を償却するのに、一体何年を費やす必要があるんでしょうかね。
いずれにせよ、よほどの大企業でもなければ、そう簡単にできるスケールではなさそうです。


◎もっと「法人ソリューション発」の一般向けサービスが出てきてもいい
正直言って、僕がもしどこぞの社長さんだったら、もう数年は導入を待ってみますね。恐らく、もう少しこの分野が活気づけば、SIの見積り競争やハードの量産効果などで、導入コストはもっと下がってくると思われるからです。

また、N900iLも、現状では残念ながら「意あって力足らず」という印象もありますね。無線LANが、11gでなくて11bなのは、開発に着手したであろう時期を考えると仕方ないのかもしれませんが、理論上の最高速で11Mbpsしか出ない11bで、QoSコントロールが必須のIP電話をやって(11gは54Mbps)、本当にかつてのPHSベースの構内電話ほどに快適な音質での内線電話ができるのかどうかは疑問だと感じます。
このあたり、実際に試してみる機会を持ちたいものですが、何せN900iLは一般の市販はされないので、そう簡単に試すわけにもいかないですし。‥

また、個人的には、法人向けのN900iLで「キャラ電」などの機能が削除されたのはいいとしても、本当に「iアプリDX」まで削除してよかったのかという気もします。言っちゃ悪いですが、メーラー連動やマルチドメインアクセス、iエリアからのデータ参照など、iアプリDXの持つ優れた機能も、まるで「遊びのために作りました」と言ってるようなもんじゃないですか。(笑)
折角のiアプリDXの機能が、「Dimo i絵文字メール」みたいなのだけなんてのは勿体無い話です。

実際のところ、法人向けソリューションでこそ、iアプリDXの機能はかなり有用なものなはず。そこまでスペックを削る必要があったのかという気もします。個人的には、一般向け携帯アプリが、あまりにも子どもじみたサービスや、昔のゲームの焼き直しが多い現状には辟易気味なので、こうした法人向け活用から、少しでも有用なアプリケーションが登場してくれればと思っていたのですが。

いずれにせよ、コンシューマ向けサービスに比べ、法人向けサービスはとかく競争原理が働きにくいので、価格競争こそ起こっても、サービスクオリティの競争による洗練は概して遅れがちです。ただしモバイルセントレックスについては、ドコモのIM標準搭載の事例を見ても、むしろコンシューマ向けサービスにフィードバックしうるアイデアも出来てきているようです。

ポケベルの女子高生ブーム、そしてショートメッセージの流行から、それに続くiモードまで、日本の携帯電話は、どちらかと言えば、若い世代のコンシューマによって発達してきたと言えます。
しかし今後、こうした法人系サービスからのフィードバックは、それはそれで一般向け携帯サービスの「精神年齢」に影響を与えることもあるのじゃないかと思っています。そういう意味では、各社のシェア争いだけでなく、モバイルサービス全般という意味合いでも、モバイルセントレックスの動きには注目を続けて行きたいですね。

|

« ドコモの災害用伝言板は素晴らしい。しかし‥ | トップページ | ちょっとだけ改造&近況報告 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18230/1789920

この記事へのトラックバック一覧です: モバイルセントレックスは各キャリアのシェアに影響を与えるか?:

« ドコモの災害用伝言板は素晴らしい。しかし‥ | トップページ | ちょっとだけ改造&近況報告 »