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2005/11/29

サルでもわかる?「MVNO入門」

来年10月から通信網貸し出し ボーダフォン復活へ一手

いきなりですがちょっと関係ないはなし。
このブログで使っているココログはアクセス解析が強力で、ユーザーがどんなキーワードを検索してこのブログにやってきたか分かる仕組みになっています。

でも、ときどきその解析結果を見ると、軽くガッカリしてしまうことがあります。
「FOMA 902i」とか「W32S」とか、「着うた」や「ゲームアプリ」などの語句を検索してくる人はとても多いのですが、「MVNO」という語句を検索してやってきてくれる人はとても少ないってことです。

確かに現在、このMVNOの業態で事業を行っているのは、日本通信やKCCSなど限られた事業者だけです。
だからまだ多くの人にとって「MVNO?ナンやそれ?」ってな感じではあると思います。

以前から「一般消費者も、もっとMVNOについて知っておかないと損をするな」と思っていました。それでこのMVNOについて、一度思い切ってちゃんと解説を試みてみようと思います。

これを読んでもらえば、「ドコモがいい!」とか「auの方がいい!」とかを言い争うよりも、何故「もっとMVNOを!」なのか、その必要性がわかってもらえるのじゃないかと思うのですが。。。

MNO



●電波を用いる携帯電話事業は「計画経済」に陥りやすい

まずは冒頭の図を見てください。これが日本の携帯電話の現状です。
「MNO」とは、「MVNO」との対比を意識した言葉で、要するにドコモやauボーダフォンなど、既存の携帯電話事業者を指します。
(MNO=Mobile Network Operator、MVNO=Mobile Virtuall Network Operator、仮想移動体通信事業者)

日本は資本主義国なので、事業を営む会社は、自分たちが売れそうだと思ったモノやサービスを、好きなだけ世の中に提供することができます。
そこに競争が生まれます。当然、良いモノ、あるいは適切な値段のモノが人気になるため、ライバル各社は負けまいと切磋琢磨します。
この繰り返しによって、我われは良質で安価なモノやサービスを手にできるわけです。(アダム・スミスの「神の見えざる手」ですね)

ところが携帯電話事業はそう簡単にはいきません。
それは携帯電話が「電波」という国民共有の資産を使って事業を営んでいるからです。
携帯電話サービスを提供したい会社は、電波を管理している監督省庁(総務省です)に、「これこれこういう事業を営むので、国民資産である電波帯域を割り当てて使わせてください」と申請を行います。
そうした結果、現在のような携帯電話サービスが提供されているわけです。

つまり携帯電話は、電波免許という「許認可」が絡んでいるため、どうしても需要や供給のバランスにダイレクトに反応しにくいという運命にあります。
上の図のように、免許が交付された時点では各社が同じ帯域を割当てられていても、実際は各社の資金力や事業開発力企画力などで差が付いてくることはザラにあります。
そして、こうしたアンバランスが生じても、「ならば免許帯域を実情に合わせて変更しよう」と簡単にいうコトはできません。なぜなら、利用する周波数帯が変わったら、今使っている基地局も携帯電話端末も、すべてが使えなくなってしまう恐れすらあるからです。

つまり携帯電話事業は、資本主義の世の中にあっても、電波という制約のため、どうしても共産主義国家のように国による統制が不可欠であり、それだけ「計画経済」に近い運営になってしまいやすいわけです。


●MVNOは電波の利用に「市場原理」をもたらす

そこでMVNOです。
MVNOは、自社では基地局網などの設備を持つことなく、MNOから電波帯域の「卸売り」を受けて、携帯電話事業を営みます。

MVNO

理論上は、MVNOが各MNOの電波帯域を効率よく使うことで、電波の利用効率はアップするわけです。
そして利用効率がアップすれば、市場原理として電波の利用コストは必然的に低下します。図を見てもわかる通り、MVNOが入ることにより、同じ帯域に、より多くのユーザーを効率よく収納することができるわけで、それによりコストは必然的に下がるというわけです。

ちなみに諸外国では、このMVNOが政令などで義務化されている国もあり、たとえば香港では、3Gで携帯電話事業を営むキャリアは、帯域の3割までをMVNOに開放しなければならないと定められています。


●MVNOで実現する、こんなサービスあんなサービス

思いつくがままにざっと挙げてみました。他にも多数の利用アイデアがあるでしょう。



いつでもどこでも、オンディマンドで楽曲をダウンロードできる、「ユビキタスなiPod」のような音楽プレイヤー

ゲームカセットに通信チップを内臓。通信料金はゲームカセットの価格にコミコミで、1年間いつでも通信対戦ができるゲームソフト

DVDプレイヤーも将来は不要になるかも!?見たい映画をリクエストしておくと、夜のうちにダウンロードしておいて専用機内に溜め込んでおき、見た映画の本数分だけ課金される「究極のレンタルビデオ端末」

ユーザー自らが、自分の利用パターンをインターネットなどで入力。「通話は夜が多い」「データ通信は昼しか使わない」『週末はデータ通信は要らない」などなどのパターンを入力することで、「自分だけの料金コース」を決めることができる携帯電話サービス。

子供のセキュリティ確保のためのGPS位置通知機能を備えた通信端末。毎月の基本料金は最低限で、本当に子供の位置を知りたいときだけ、親が自分のケータイやインターネットから指示を出し、子供の詳細な位置を把握して、警察への自動通報機能も備えるセキュリティ機能。
(ドコモの子供ケータイなんて甘い甘い。本当に使わないときにも同じだけの基本料金発生なんて勿体ないです)

CS事業者が、CSチューナーに通信チップを内臓。オンデマンドで自分が見たい番組だけスクランブルを解除して、番組視聴料金は通信料金に合算して支払い。

NHKが、地上デジタル放送に通信チップを内蔵し、「本当に視聴した人」に対して「視聴した分」だけお金を確実に取ることのできる仕組み。(これは消費者サイドから見たらちょっとイヤかも(笑)それに法改正も必要ですね)



‥おそらく、他にも無数のアイデアがあるだろうと思います。
MVNOが一般的になれば、各社が知恵を絞っていろいろなサービスモデルを出してくることでしょう。


●MVNOに関する素朴な疑問Q&A



Q:でも、既存のMNOからしたら、莫大な投資をして基地局網を整備したのにわざわざ他の事業者に使わせるなんて、やっぱり納得が行かないのじゃないの?

A:莫大な投資をしたからこそ、まだ空いている帯域をMVNOに対して売ることで、設備投資の回収時期を早めることができるはずです。既存キャリアが言っている『基地局への莫大な投資に見合う利益が出なくなる』云々は、自らの「既得権」をより長期間に渡って確保するための方便であり、会社経営という観点で言えば、設備投資は早期に回収できた方がいいに決まっているのです。
にも関わらず、投資の償却期間を長引かせてでも一社だけでサービスをしようとするのは、要するに既得権を守った方がサービスの価格を高くしておけるので「経営上有利」という判断をしているのでしょう。




Q:基地局網を敷設したコスト分まで上乗せしてMVNOに使わせたら、結局値段が割高になって、消費者は安いサービスを受けられないのじゃないの?

A:それは違います。現在わずかに日本で実施されているMVNOの例を見ても、MNOがMVNOに対してつけている帯域卸売りの値付けは、「本来MNOが同じ帯域分で事業を行った場合に得られるであろう収益期待値」に対して、さらに利益分を乗せて販売をしています。それでもMVNOはそれなりの収益を上げることができています。 一説には、MVNOの電波帯域あたり収益(ないしは売上)は、MNOの3倍ほどもあるといわれており、MVNOの導入によって、電波の帯域原価は確実に低下するはずです。




Q:上記に例として挙げたMVNOのサービス例は、別にMVNOがやらなくても、通常のMNOがやれば済む話じゃないの?

A:いいえ。すべての事業には「選択と集中」(Selection and Concentration)という大原則があります。一社が「あれもこれも」と、全てのサービスを手がけようとしたら、人員やコストなどの資源を、広く薄くいろいろな分野に割り振らなくてはなりません。結局MNOだけでサービスを提供していると、どうしても「一番儲かる事業」だけをやって、他に注力しなくなってしまうのです。(その良い例がiモードです。何故ドコモがiモードには注力するのに、PCやPDAをモバイル通信する事業の方は相変わらず貧弱なままかと言えば、それは端的にiモードをやったほうが儲かるから、より優秀な人員をiモード事業の方にに振り分けているという事情によります) 各分野のスペシャリストがMVNOとして事業を行った方が、経営資源を各分野に効率的に配分できるので、理論上はサービスも洗練され、コストも下がるはずです。



‥さて、随分長くなってしまいましたが、MVNOについて、少しでもイメージしてもらえたでしょうか?
最近の日本では、ソフトバンクやイー・モバイルなどの新規参入ばかりがクローズアップされています。
もちろんそれは競争促進にはよいのでしょうが、実際はそうした新規参入組とて、3000億円以上もの資金を投入して事業を行うわけで、どうしても投資への償却は考慮せざるを得ません。
参入にカネがかかればかかるほど、料金を安くするのは難しいのです。

そういう意味でも、参入への資本ハードルがあまり高くなく、各社が特色あるサービスを安価に提供しやすいMVNOにももっと目を向けてほしい、そう思います。


※解説内容には気を付けたつもりですが、事実誤認などありましたらご指摘ください。

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