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2005/12/31

携帯電話&モバイル業界~2005年マイトピックその1

大晦日ギリギリのタイミングではありますが、僕なりに今年の携帯電話・モバイル業界のマクロなトレンドをまとめてみました。

2005年は、新しい電波方式やパケット定額のような大きな変化よりも、もっと質的な変化が目立った1年でした。言い方を変えれば、「ケータイ多様化元年」でしょうか。
携帯・モバイル業界は、大まかに「通信キャリア」「端末メーカー」「サービス提供事業者」の3つに大別でき、そこに下部レイヤーとなる「端末販売」や「アウトソーサー(バックオフィス構築などの)」がぶらさがる形だと思いますが、それぞれに明らかに質的な変化が生じてきていると思います。

そして来年は?
来年は、いよいよMNPや新規参入、そして一般コンシューマ向けMVNOがはじまる年です。
しかし、どれもスタートは来年も末になってからであり、その影響は少なくとも2006年はまだ小幅なものに留まるでしょう。
そして来年の大きなトピックは、何と言っても「ワンセグ」です。
しかしこれも、2006年はまだ端末普及・エリア拡大の途上となるため、実を言うと来年の大半の時期は、それほど大きな変化が起こるわけではないことに注意が必要だと思います。

では以下、今年のトレンドを5つ箇条書きにしてみます。
まずは(その1)として2つです。

(1)端末デザインの向上はハンドセット多様化時代の序章か?

2005年は携帯電話端末のデザインレベルがアップした年でした。もはや「au Design Project」や「(ドコモの)企画端末」などなど、わざわざことわり書きをするまでもなく、通常ラインナップのデザイン偏差値も確実に向上しました。

特に進化が著しいのは年末になってから出たFOMAの902iです。中でも三菱や富士通などシェア低位のメーカーがデザイン的に果敢な挑戦をしています。シェア上位メーカーが現状維持をするためにキープコンセプトせざるを得ない中、失うものが少ないこうした下位メーカーがデザインを武器に上位メーカーに食い込もうとしています。
また誰にもわかりやすいデザイン進化を遂げた902iだけでなく、他のモデルや他社のモデルにおいても、デザインのレベルはディテールで確実に進化を遂げています。

これは今年の春に某月刊誌のコラムでも書いたのですが、思えば「au Design Project」とは、自動車業界に例えると1987年に日産が手がけたパイクカープロジェクトのようなものであったと思います。(auも日産も、業界においてはシェア2位の会社からまず、こうしたデザイン革新への提案が起こっていることは注目に値します)
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※日産パイクカーのさきがけ「Be-1」(1987年)と、auの「infobar」(2003年)

‥今見れば別にどうってことのない「Be-1」ですが、当時はこのぐらいのデザインでも十分に衝撃でした。それは、あたかもauが「infobar」を出したときの話題性に似たものであったと思います。
これらの刺激を受けて日本車のデザインは全体としても進化を遂げ、今ではBe-1を見ても誰も特別にデザインコンシャスな車だとは思わなくなりました。

こうした現象は、とりもなおさず2004年までの日本の携帯電話が、産業水準としてはまだまだ自動車における1987年と同じぐらいの位置、つまり「バブル初期の産業段階」にあったことを示していると思っています。
「端末の選択肢の少なさ」(どれもこれも折り畳みで2.4inchQVGA液晶)、「評価軸はひたすら機能性能ばかり」(カメラの画素数が大きいとエラかった)、そして「大企業のトップから渋谷の女子高生までが同じモデルを使っている」(だからデコしたりストラップに凝ったり着メロを登録して少しでも差異を出そうとする)ことを、誰も不思議に思わないという、一種の「1億総中流幻想」的なプロダクツ。
それが2004年までの「携帯電話」という商品だったのではなかったでしょうか。
2006年以降、こうしたデザインの洗練、そしてユーザー層に応じたセグメント化という流れはさらに加速するだろうと思います。それはある意味、ニッポンのケータイがバブル期を終え、産業としてようやく成熟段階に入ってきたことを示すものだと思います。

だとしたら、トヨタの「Lexus」のような超高級携帯電話ブランドも登場するのか?
恐らく数年しないうちに、そうした徹底的な差別化を施したブランドも登場してくるだろうと思います。

また、カスタムジャケットに代表される「ユーザーカスタマイズ」が確固たる地位を確立したことも、2005年の特筆すべきトレンドだったと思います。
なにせ「FOMAのP」は、カスタムジャケットがあるということ以外、特筆すべきウリがほとんどない悪く言えば「凡庸なケータイ」です。にも関わらずPが、900iシリーズ中常にトップの人気を博してきたのはカスタムジャケットの存在に他ならないでしょう。
これは「人と同じケータイを持ちたくない」というユーザーの潜在的願望の現われであり、ニッポンのケータイに、まだまだ多様性が足らないことの表れであると考えています。

カスタムジャケットというと、「欧米ではNOKIAあたりはずっと前から着せ替えだよ」という人がいます。
しかし、カスジャケ以前の着せ替えパネルは、実は素材や加工の自由度が低く、結果的に製品のバリエーションが少ないものでした。カスタムジャケットの一見無骨なネジ止めと平べったく単調なパネルは、逆に素材や加工の自由度を大きく広げ、無数の小規模な事業者や個人製作者による多彩なオリジナル製品を生み出しています。
ここが面白いと思っています。

恐らく来年は、auもボーダフォンもカスタムジャケットの概念をもっと取り入れたモデルを投入してくるでしょう。
もっとも、「カスタムジャケット」はNTTドコモの登録商標であり(そうですパナソニックの商標ではありません!)この名前を使うことはできませんが。


(2)携帯電話キャリアの自己防衛&業態の多角化進む

通信サービスそれ自体においては、2005年は格別な進化は少なかった1年でした。
主要3キャリアにおいては、シェア防衛あるいは奪回のため各社が料金プランの「小幅な」見直ししてきましたが、それを仔細に見ると、見事に各社の狙いも浮き彫りになります。

ドコモ&auにおいては、「これ以上新規顧客を取るより、まずは既存ユーザーを逃がさない」という方針も鮮明であり、「解約しないで使い続けたらトクだよ。解約すると損するぞ」と言いたげなプランです。
また、そうした露骨な長期利用者優遇策や、(家族割引と合せて初めて)「最大50%オフ」など、これでよくJAROに怒られないなと思えるほど悪質な誇大CMを、「ドコモダケ」などのマスコットキャラクターで中和しようという、極めて巧妙なCM戦略も見ものでした。
また、2007年問題を睨んでのauによるツーカー吸収、そしてauに追随してのドコモの老人優遇プランなど、日本の人口動態の変化に合わせたプランの変化もありました。
ボーダフォンについては、限定的ではありながら通話定額の実施によって、ついに伝家の宝刀を抜いた形になりますが、契約数・解約数においては小幅ながら功を奏しており、今すぐできるシェア挽回策としてはまずは成功と言えるのではないでしょうか。

ドコモとauは、通信事業以外への業態の多角化が進んだ1年でもありました。
2004年から始まっていたauの、コンテンツ分野への直接進出は2005年にも進みました。また、ドコモもiチャネルでは自社自らがコンテンツ配信のイニシアチブを取るほか、タワーレコードの筆頭株主になったり、フジテレビに出資したり、資本参加によるコンテンツ分野への進出も目立ちます。

また、ドコモの金融分野への進出も大きなトピックでした。昨年以前にもドコモはすでにビットワレットの第二位株主になっていましたが、今年はさらに三井住友カードへの資本参加を行い、「iD」によってカードビジネスに参入を果たそうとしています。

後年、もしも携帯電話キャリアの歴史を振り返って総括する者がいたら、従来型の携帯電話キャリアのピークは、実は2005年でも2004年でもなく、それよりも前の「2003年」であったと記すでしょう。
事実、通信キャリア本来のARPU主義主体による業績のピークは、もはや2年前の2003年であって、昨年も今年も、主要携帯キャリアは、端末インセンティブの積み上げや料金プランの変更により、ARPUに直接関わる事業業績においては、すでに完全にピークを超えてしまいました。それを受けて、コンテンツや金融分野などへ業態の多角化をしていこうというのは、営利企業のやることとして理解できない話ではありません。

しかし問題は、携帯電話の契約にコンテンツや金融サービスを「抱き合わせる」ことにより、消費者が携帯電話の契約先を選ぶ自由も同時に制約を受けるということです。
着うたフルを使ったユーザーは、もはやau端末以外に契約変更すれば全てのダウンロードデータを失いますし、ドコモの「iD」で、ドコモ自身のクレジットカードを作ったユーザーは、キャリア変更をしたが最後、電話番号こそ保ててもクレジットカード契約におけるサービスメリットを(さらには料金優遇策も?)失ってしまうのです。

ユーザーから見れば、「たかが携帯電話の契約変更」ぐらいで、音楽リスナーとしてのライフスタイルや生活の基盤であるクレジットカードの特典まで失うというのは、誰が何と言おうと明らかに「やりすぎ」です。
携帯電話会社が行うこうした業態の多角化が、「自社ユーザーの囲い込み」という本音の部分での副次効果をも狙っている限りは、業態を変えることへの大きな社会的リスクは付いて回るということを、彼らキャリアは認識すべきではないでしょうか。


‥長くなりましたので、続きは(その2)にて。

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