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2006/03/05

本当に大きな変化は起こるのか?ボーダフォン買収

(3月5日12:00:少し記述を追加しました)

うーむ。あのYahoo!を傘下に置くソフトバンク絡みのニュースとなると、ブログの世界は特に反応が大きいようです。ボーダフォン買収は、そこら中のブログで大きな話題になってTBも飛び交っており、否応なしに追加考察をエントリー得ざるをえません。

まず仮に買収が実現したとして、数多くのブログがトバし気味に予測しているような「劇的な変化」は、本当にそんなに早くやってくるのだろうか?
この買収は日本企業によるM&Aとしては史上空前の規模で、ボーダフォン本国にとってもソフトバンクにとっても、かなりの決意を要することには違いありません。資本調達の手法については、詳細な考察をされている三上さんのエントリーなどをご覧いただくとしても、少なくともプロ野球球団を買収するのとはケタが違う。
巨額のファイナンス処理をキチンと始末し、大企業にとって不可欠なコーポレートガバナンスやIRの体制を整えるだけで、それ相応の時間を要することはまず確実でしょう。
そして、固定通信と移動体通信というのは、多くの人が考える以上にやはり似て非なるものであり、仮に買収が実現したとしても、既存の「ボーダフォンユーザー」「端末ラインナップ」「各種料金体系」など、もろもろとの整合を取りつつ、そこから「ソフトバンクらしい戦略」へと踏み出すには、実のところかなりの期間を要しましょう。

むしろ私が関連エントリーで最も共感したのは、「WMR -web2.0ミステリー調査班」さんのエントリーだったりします。
多くのPCユーザーが考えるほど、ケータイの世界とPCの世界はシナジーを生み出してこなかったし、その流れがSB参入でいきなし変わるとは考えにくいのです。

「ADSLモデム並みに端末をタダ同然でバラまく」とか「日本テレコムとのFMC」であるとか、憶測されるそうしたドラスティックな策に踏み出すには、買収完了時より、最低でも1年前後以上の期間を要するはずです。
(まぁ型落ちの旧い端末なら、在庫処分でタダでもバラまくぐらいはやるのかも(笑))

買収はカネさえ積めば短期間で終わるでしょうが、端末も網もサービスも、一夜で出来上がるわけではないでしょう。auやドコモですら、新コンセプト端末開発の期間は短縮傾向とはいえ、企画から発売までに最低1年は要しています。ましてやバックボーンのFMC化や新サービスの企画開発となればなおさらです。
そうしたこと全てに関わる物理的リソースを考慮すれば、「SBグループには旧Jフォンのスタッフが多く流れている」などの裏事情も、相対的には小さなファクターでしかないと思います。


個人的には、むしろ同日に判明した、こちらのニュースの方が負けず劣らずインパクトが大きいのじゃないかと思います。
「反ドコモ包囲網」であった、ネット決済推進協議会の一角であるUCカード(&みずほ銀行)が、なんとドコモと資本提携してしまったのです。
きっとJCB陣営からすれば、牙城の一角を切り崩された気分でありましょう。

◎ニッポンケータイはグローバルスタンダードに近い場所へと向かうはず

こうした案件は、あまりにも多くのファクターが絡む「複雑系」の事象であり、どういうファクターがどうした力点で絡むか、それを予想するのは至難の業です。
ですから自分としては、起こる影響としてもっともシンプルに「必然性のある変化」を掲げざるを得ないのです。

<このブログでの考察>(ツッコミ等ありましたらTBどうぞ)

(1)SBが「新規参入」から「既存事業者の買収」へと変わることで、SBの携帯電話事業は「業界秩序への殴りこみ」から、「業界秩序維持の一角を担った上での暫時的巻き返し」へとベクトルが変わる。
つまり、万事においてドラスティックな施策は減る方向となり、既存のボーダフォンのビジネスを守りつつ、少しづつ差別化などを行う方向に向かうと予想します。
いかにボーダフォンが日本でシェア低位でも、基本的な収益力はADSLなどよりずっと高い事業なのですから、1兆円以上も出しておいてドラスティックな施策を打つとは考えにくい。
R30氏が書かれているところの「ブレークスルー」も、本当にそうした劇的な巻き返し策をSBが志向しているかどうかは分からないと思います。もはやSBはADSLで価格崩壊を引き起こした2001年当時とは違い、その後にスタートさせた光においても直収固定電話においても、むしろ業界秩序の維持形成の一翼を担っているとさえいえるのですから。

ここで言う「業界秩序」というのは何かというと、ズバリ「諸外国に比して高止まりしているケータイ音声通話単価、そして契約基本料金」です。auはWINになって音声通話をむしろ値上げしたし、FOMAも例の「ドコモダケ」でむしろ音声単価を値上げし、低下傾向にあるARPUの足しにしようとしている。それに比べたら、iモードやEZWebのデータARPUというのは、キャリアにとって決して大きな比重を占めるものではないのです。 言い方を変えれば、日本のケータイユーザーは、ゲームアプリやらEZチャンネルやらのデータ系サービスを「おまけ」につけてもらうことで、代償として高い電話料金を支払っているという見方すらできましょう。

(2)仮に買収が成功した場合、SBにとって最初のハードルは、「参入の実現⇒契約の奪取」から、「MNP実施による大量解約の防止」へと180度ベクトルが変わる。
‥何せMNPは、2006年11月には『確実に』実施されるのであり、そこから直近で解約が最も増加する時期にあたる「2007年3月期」を乗り切るためには、すでに「まったく新しい端末/サービス」の投入は時間的にほとんど間に合いません。一番手っ取り早くできるのは「料金/割引プラン体系の変更」ですが、それですら残された時間はかなり少ないといえます。
個人的な憶測ですが、残された時間を考慮すると、ボーダフォンが買収前から取ろうとしていた解約防止施策(それが料金なのかサービスなのかわかりませんが)が、来る2006年度中は恐らくほとんどそのまま踏襲されるだろうと予想します。
要するに、2006年度はSBにとっては「各種の仕込み」「参入スピードアップの実現」だけで精一杯の期間であるはずで、その間は、暫定的にボーダフォン本来の施策が踏襲されると予想するのです。

(3)「高機能(高価格)な端末をバラまいて高ARPUユーザー契約を獲得」という施策において、SB買収後にその流れが加速するとは考えにくい。
それでなくとも、日本の端末は高機能高価格すぎて諸外国ではほとんど価格競争力がない。ボーダフォンはもともと「グローバルな端末展開を少しでもお手伝いすることで日本の端末メーカーに貢献したい」とコメントしていた会社ですから、SBの買収によって、こうした考えをいきなり覆すとは考えにくい。
むしろ冷静に現在の日本ケータイを見たとき、もっとも足らないものは‥、
 ・「安価でシンプル、グッドデザインでコンパクトな端末」や
 ・「余計なサービス(あのプッシュトークのような)や機能をゴチャゴチャと付けず基本的な通話&インターネット接続が安価にできる端末」
ではないかと思います。
こうしたものならば、さほどの時間や費用を必要とせずかなりの低コストでバラまける可能性は高い。
しかも、海外メーカーから調達した安い端末を使って。

‥上記のように考えると、仮に買収が実現したとして、行われる施策としてもっとも現実性が高いと予想するのは、せいぜい下記程度です。

[端末についての憶測]
ハンドセット:最低1年はV社のコンセプトをキープしつつ、徐々にインターネットに対してオープン化
PCカード系:HSPDAの早期投入により料金相場を低下させ、モバイルブロードバンドにおいてYahoo!BB、Yahoo!ポータル系との連携を強化する可能性はあるかも。
(ただし、PCデータカードはハンドセットに比べて元々の需要が比較にならぬほど小さいため、そのインパクトは多くの人が予想するほどの規模ではないと思われる)

[料金体系についての憶測]
基本的な収益構造を守るため、音声通話の単価水準は堅持しつつ、解約防止のための家族割引や「LOVE定額」のようなグループ囲い込み系の割引を強化。
料金単価水準自体の低下は、端末インセンティブとの整合性が取れなくなるため、早期には行われないだろうと予測。
データ通信に関しては、まぁ「Yahoo!BBサービスの接続割引」ぐらいはやってくるかも?(笑)

[サービスについての憶測]
「Yahoo!コンテンツストア」などとの連携を徐々に高める傾向にシフトするか?
‥ただし、同サービスが長期的に描くモデルである「PC/携帯を縦貫するコンテンツの提供と課金」については、直近ではそれほど高いサービス需要が開発されていないため、少なくとも向こう2年は、劇的な差別化要因になるとは考えにくい。

[(後で追加)もしかするとPCメールとの連携は早期にやってくるかも]
上記の「Yahoo!コンテンツストア」に関連しては、メールアドレス系のサービスについては、早期に「PC連携施策」をやってくる可能性は結構ありそうな気がします。これは「メールポータビリティ」の名目でMNP対策にも効果があると思われるし、「PCのメールをケータイでいつでも送受信できる」は、直近で一番需要が見えているサービスである割には、比較的早期に安価に、実施しやすいと思われるからです。
これならば、たとえば最低限Vアプリや、SymbianOS上のアプリ実装など、端末に対して後付けでもすぐに実行できます。

[(後で追加)「まとめてau支払い」のような「決済のFMC化」は早期実施かも?]
後で考えたのですが、auが、かの「LISMO」のスタートに紛れて、携帯キャリア決済である「まとめてau支払い」を、PC上からのコンテンツダウンロードにも適用してしまったような、いわば「決済のFMC化」については早期に進む可能性があるかもしれませんね。既にYahoo!側には、1,000万以上という日本最大級のアカウント数を誇る「Yahoo!ウォレット」があります。たとえば「Yahoo!ウォレット」の決済をボーダフォンの電話料金に合算して行うなど、PC⇔ケータイを縦貫する「相互乗り入れ」を行ってくる可能性は高いかもしれません。
当然、それと同時にYahoo!BBユーザーに対する契約優遇策などを導入し、徐々に固定BB契約とのシナジーを作ろうとしてくるかも。



‥とまぁ、上記のような「さほどドラスティックではない変化」を予想してしまうので、自分としては、MNPの時期を逃してしまったとしても、ソフトバンクには、もっと長い目で見て、「第四の携帯キャリア」としての参入を実現してほしいのです。
当初は苦しい人口カバー率の問題にしても、ボーダフォン回線のMVNOをすれば、かなり解決はできるはず。
確かに携帯キャリアの参入増加は、業界秩序の混乱や収益力の低下など、今後、大きな混乱をもたらすやもしれません。
しかし、端末メーカーからの調達価格が7万円もする端末を3万円程度の逆ザヤで売り、それを、あの手この手で高いARPUを維持して回収しようというモデルは、いずれは必ず緩やかな終息へと向かうでしょう。

そう考えると、やはり長期的な携帯電話ユーザーの利得を考えた場合、やはり「ボーダフォンは買収ではなく、新規参入によって携帯電話事業を実現してほしい」と考えるのです。

とはいえ、この件についてはもちろん、いろいろなご意見を拝聴したいと思います。
いろいろな分析・オピニオンを見たくなった方は、ぜひブログランキングにも一票をば。m(_ _)m


P.S.
とはいえ最近は、こうしたキャリアや端末メーカーみたいなマクロな動きよりも、コンテンツプロバイダ等が手がける個別のサービスやコンテンツなど上に乗っかるモノの動きの方に、より興味の対象が向かってはいるのですが‥

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